今回はあなたの城の支出を計算します。
使用人の俸給
まずはあなたの城にいる50人の使用人の俸給を考えます。
参考にするものが欲しいので、まずはトンネルズ&トロールズ関連作品の中にいくつか出てくる俸給を見てみましょう。といっても、見るのはこの1冊だけです。
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日本語訳がある作品のうち、主人公が俸給を受ける立場になるものは、「ガルの地下水道」と「オーバーキル城」の2作があります。(あと、「運命の審判」でカザンの殺人部隊に入隊できますが、俸給は出ません。)
うまい具合にこの2作がペアになっている社会思想社版を紹介しましたが、「ガルの地下水道」の方はこちらでも入手可能です。
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「オーバーキル城」は現在入手困難な状態ですが、これからの日本の展開が進むことを期待しましょう。
これらの作品に登場する役職/地位と俸給を次の表にまとめました。
役職/地位 | 週給 | 年給に換算 | 作品名 | パラグラフ番号 | ||
伯爵家の衛兵隊長 | 15 | GP/週 | 780 | GP/年 | ガルの地下水道 | 184 |
死の軍団の将軍 | 750 | GP/週 | 39,000 | GP/年 | オーバーキル城 | 9 |
死の軍団の副将軍 | 500 | GP/週 | 26,000 | GP/年 | オーバーキル城 | 34 |
カザン軍少佐 | 75 | GP/週 | 3,900 | GP/年 | オーバーキル城 | 48 |
ドラゴン軍隊員 | 200 | GP/週 | 10,400 | GP/年 | オーバーキル城 | 52 |
カザン軍副隊長 | 50 | GP/週 | 2,600 | GP/年 | オーバーキル城 | 71 |
連隊長 | 200 | GP/週 | 10,400 | GP/年 | オーバーキル城 | 83 |
(軍の)英雄 | 100 | GP/週 | 5,200 | GP/年 | オーバーキル城 | 100 |
さらに、俸給がもらえる条件や護衛が何人か付くなど細かな待遇の違いがありますが、今回は省いています。
結構どの地位も高給ですね。前回のT&Tにおける領地経営その6で算出したあなたの領地からあがる収益が8万GP弱だったので、これらの人材をかかえるのはつらいですね。
これらはなんらかの偉業をなした冒険者に与えられる褒賞的な地位なので、小領主であるあなたの使用人たちへの俸給の参考にはならなかったかもしれません。
一番低いのは伯爵家の衛兵隊長ですが、これもカーケン伯爵は伯爵というくらいですから、あなたよりもずっと地位も実力もある領主でしょう。
そこで、いつもの参考資料である、J・ギース/F・ギース著『中世ヨーロッパの農村の生活』を見てみましょう。
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この本にはいくつか参考になりそうなことが書いてあります。
例えば、P77に次の文があります。
騎士の執事は俸給を土地保有という形でもらったが、聖職者の執事の場合は...あなたの場合は小領主なので執事の地位は騎士というほどではないですが、俸給はかなり高そうです。まあ、あなたの領地は広大なので、執事に土地の保有を認めても良いかもしれません。
他に、P73に荘園差配人について、次のように書いています。
たとえばエルトンでは、俸給が年20シリング、その他に部屋と食事、毛皮の外套、馬の飼い葉、クリスマスの寄付用に二ペンスが与えられた。また、P83には直営地労働者について、次のように書いています。
全員にそれぞれ年二~四シリングの俸給と、揃いの服、穀物、小麦粉、塩、手袋一組、クリスマス献金のための現金が支給された。それに続けて、こうあります。
それより安い俸給で働いていたのが、料理人一人、...あなたの使用人のうち、何人かの俸給が見えてきましたね。
もう少し参考データが欲しいので、Gigazineの『中世ヨーロッパの物価をまとめたリスト』を見てみましょう。
傭兵は常時雇われているのではないでしょうから参考にならないとして、エクスワイア(従士、見習い騎士)の俸給が1シリング/日=365シリング/年です。
そのほか、正規兵の隊長が8シリング/日=2920シリング/年ですね。これは1シリング=1GPとするならカザン軍副隊長よりちょっと上ですからいい感じですね。
ほかに気になるのは男爵の最小値、つまり小さい領主と思われますが、200ポンド/年=4000シリング/年ですね。あなたの収入が収支を引く前とはいえ、8万GP弱あるのは大きすぎますね。
考えてみたら領民の農家が年に4000GP近く(仲買人に売ったら半分の2000GP)の収入がありましたよね。有利にしすぎたのかもしれません。
そのほかに参考として、聖職者(あなたの城ではかわりに魔術師)が年に4ポンド13シリング4ペンス=93.33シリング/年。使用人が年収2~4シリングなどでしょうか。
これらのデータを参考にしつつ、城の使用人の俸給を次のようにしました。
役職 | 人数 | 俸給 | レベルと役割 | ||
家令 | 1 | 人 | 400 | GP/年 | 4レベルの戦士 |
従者 | 1 | 人 | 100 | GP/年 | 1レベルの戦士 |
厩番 | 1 | 人 | 10 | GP/年 | 1レベルの市民 |
学者 | 1 | 人 | 100 | GP/年 | 1レベルの魔術師 |
城内差配人 | 1 | 人 | 50 | GP/年 | 1レベルの市民 |
料理頭 | 1 | 人 | 10 | GP/年 | 1レベルの市民 |
料理人 | 1 | 人 | 3 | GP/年 | 1レベルの市民 |
女中頭 | 1 | 人 | 6 | GP/年 | 1レベルの市民 |
女中 | 1 | 人 | 3 | GP/年 | 1レベルの市民 |
子供 | 2 | 人 | 0 | GP/年 | 0レベルの市民 |
食客 | 1 | 人 | 600 | GP/年 | - |
荘園差配人 | 1 | 人 | 200 | GP/年 | 2レベルの戦士 |
従僕 | 1 | 人 | 5 | GP/年 | 1レベルの市民 |
小作人 | 18 | 人 | 54 | GP/年 | 1レベルの市民 |
小作人の家族 | 18 | 人 | 0 | GP/年 | 0レベルの市民 |
合計 | 1541 | GP/年 |
家令と従者(従士)と荘園差配人は戦士階級の人たちなので、それぞれのレベル×100GPで決めました。田舎の小領主の家令なのでまあそんなものかなと思います。領民の農家より家令の方が収入が低いじゃないかと思うかもしれませんが、城の使用人たちは俸給のほかにも衣食住すべてを領主であるあなたが面倒をみるので、一概に家令の方が収入が低いとは言えません。また、先ほどもありましたように家令家に土地の保有を許してもよいかもしれません。
魔術師も戦士階級と同じくレベル×100GPとしました。先ほど聖職者の年収が93シリングだったので、同じくらいですね。
厩番と料理人頭はちょっと多めにしました。城内差配人はその上なのでもうちょっと多くしました。
小作人は18人で54GPなので、一人3GPです。36人の小作人とその家族のうち、働ける人を18人とみています。
食客に一番高い600GPを付けていますが、これは俸給というよりも滞在にかかる費用です。有名な食客を迎えるのは城主であるあなたにとってのステイタスでもあります。なぜ600GPにしたのかは後ほど説明します。
そのほかの城の維持費
使用人の俸給は算出しましたが、城を維持していくには他にもいろいろかかります。城や領内の設備の維持費や修繕費、使用人たちの食と俸給は出しましたが、彼らの住むところや着るもの使う道具などもあなたが出さなければなりません。そのほか祭りなどの催しや、近隣の領主や上位の支配者との付き合いもあるでしょう。戦争が起こったり、モンスターが出るかもしれません。
さて、困りました。そんな城の維持費の参考になりそうな資料が見当たりません。そこで、とうとう日和やがったと思われるかもしれませんが、この領地経営というテーマの元ネタである、クラシックD&Dの通称緑箱、コンパニオンルールセットには何と書いてあるか見てみましょう。
緑箱によると、全収入の20%をより上位の支配者に、10%を神政に納めなければならないとしています。封建社会ですから、税を直接上位の支配者に渡すこともないではないでしょうが、幹線の街道の整備を申し付けられるとか、都の警備をするとか、色々含めてのこの価格ですね。いいアイデアですね、いただきましょう!
ついでなので、城と領内の維持費にもう10%費やすことにしましょう。そのかわりに、来訪者や祭日その他のルールは無しとしてここに費用が含まれることにします。なお、俸給の表で食客に600GPつけていたのはD&Dの来訪者は最低限月に50GPかかるとしているためでした。より上位の来客ではさらに費用が上乗せされますが、その分はこの10%の中から出ることにします。
使用人たちの衣と住ですが、「住」は城や小作人の小屋があるからよいとします。
「衣」はT&Tにはおなじみの最初に3d6を振って10倍したGPで装備を買うルールがありましたよね。これくらいの価格で50人の使用人に対して夏と冬の年2回の費用を出すことにしましょう。実際には小作人に粗末な衣類でしょうし、家令にはよい衣類を買ってあげると思いますが、平均すると一人当たり3d6×10GPかかるという事です。戦士や魔術師でない人々には武器や防具は必要でないかもしれませんが、彼らも鍬とか包丁とか必要な道具をそろえることにしましょう。50人分年2回の期待値は10,500GPになります。
さあ、収支は?
すべての項目を検討し終えました。収支は次のようになりました。
費目 | 金額 | 単位 |
収入 | 75,555.27 | GP/年 |
使用人の俸給 | -1,541.00 | GP/年 |
上位の支配者への奉仕 | -15,111.05 | GP/年 |
神政への奉仕 | -7,555.53 | GP/年 |
城と領内の維持費 | -7,555.53 | GP/年 |
使用人の衣服・装備 | -10,500.00 | GP/年 |
合計 | 33,292.16 | GP/年 |
つまり、最終的にあなたの手元には年に33,292GP 1SP 6CPの収入が残るということです!
あなたはこの領地を100万GPで手に入れたので、元が取れるまでに31年かかるという事ですね。
ちょっと、不良物件をつかまされましたね。しかし、あなたの領地が発展し豊かになれば未来は明るいかもしれません。
次回は最終回です。これまでの内容をゲームで使うために考えてみたいと思います。
良い冒険を!
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